東日本大震災から10年。 これからの10年を支える物流施設とは?
昨年から世界的に猛威をふるう新型コロナウイルス感染症は、外出規制による巣ごもり需要を生み、日本の3大都市圏において、活発化していた物流施設開発にさらに拍車をかけています。このような物流環境を取り巻く急激な変化は、それまで物流適地としてあまり注目を集めることのなかった地方エリアにもおよび、先進的物流施設の新規供給計画は全国に拡大しています。
今回は、2011年の東日本大震災から10年を迎え、倉庫需要が旺盛な東北エリアに注目し、基幹インフラの復旧・復興の進捗、物流集積およびエリアのポテンシャルを探ります。さらに地方へ広がる物流開発の中長期的な可能性について考えます。
地方エリアが担う役割はますます重要に
首都圏をはじめとした三大都市圏においては、テナント需要が旺盛であるにもかかわらず、新規供給は限られていることから、優良物件は先押さえされる傾向にあります。そのような流れの中、地方エリアにおける物流施設開発が活発化しつつあります。
「物流施設利用に関するテナント調査2021」によると、拠点戦略として、どのようなエリアやタイプの倉庫を想定しているかという問いに対し、従来のタイプの倉庫よりも、「大都市圏に隣接する衛星都市の物流センター」や「出荷側の仕分け倉庫」を挙げた回答者が多く、北関東や東北、北陸・上越など、大都市圏から外れた地域を希望の立地として挙げています。大都市圏の物流センターに対するニーズもいまだ多いものの、その拡充がある程度進んだ結果、それ以外の地域の課題が相対的に大きくなったと考えられます。
トラックドライバーの労働条件改善が喫緊の課題となっている物流業界において、長距離輸送を前提としない配送網を本格的に考えなければならない段階になったことも背景にあると思われます。
需給ギャップが大きく、ポテンシャルが感じられる東北エリア
東北エリアでは2020年、2021年に計2万坪弱の供給が予定されています。需給を見ると、2020年から2022年までに予定されている約5.9万坪の供給に対して、CBREでは約8.3万坪の依頼を、 2020年から2021年6月末までに受けています。東北エリアは依頼面積と供給予定面積のギャップが特に大きく、倉庫需要が旺盛で情報を求めている企業が多いことがうかがえます。
東日本大震災から10年、インフラや産業で進む復旧・復興
2011年に発生した東日本大震災により、東北エリアのインフラは甚大な被害を受けました。震災から10年目の今年、復興道路・復興支援道路全線570kmが開通します。これにより、エリア内外への輸送時間は大幅に短縮し、アクセスが改善されつつあります。
また、被災6県(青森、岩手、宮城、福島、茨城、千葉)の海岸堤防(防潮堤)の整備計画の総延長431kmの半分以上が宮城県内で総延長233.1kmです。宮城県の海岸堤防(防潮堤)の整備計画の88%にあたる204.8kmが今年7月末までに整備されています。
さらに、震災から7年後の2018年には、被災3県と沿岸部の製造品出荷額は、震災前の水準まで回復しており、この10年間で復旧・復興は着実に進んでいることがわかります。