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日本たばこ産業株式会社|プロジェクトケーススタディ

日本たばこ産業株式会社

日本たばこ産業株式会社(JT)は、2020年10月、東京・虎ノ門の自社ビル「JTビル」から神谷町トラストタワーに本社を移転した。社内外のコミュニケーション活性化をはじめとした従業員の意識行動変容の推進を目的とし、ABWの導入を計画したが、従来の働き方に慣れた従業員への浸透は一筋縄ではいかなかった。しかし、コロナ禍で行われた本社移転は、その後意外な結末を迎えることに。新しい働き方を浸透させるための取り組みを取材した。

社内外の共創促進を企図し虎ノ門の自社ビルから テナントビルへと本社移転。
コロナ禍を経て手に入れた新しい働き方とは。

社内外のコミュニケーション創出
日本たばこ産業株式会社

日本たばこ産業株式会社

他の部署のフロアに行きづらい、交流が生まれにくい旧オフィス

たばこ事業を中心に、医薬事業、加工食品事業の3事業をグローバル展開するJTは、2020年10月、本社を東京・虎ノ門のJTビルから、目と鼻の先の新築オフィスビル、神谷町トラストタワーに移転した。

同社のシンボルタワーであるJTビルを売却してまで本社移転を実施した背景には、「変化が見通しづらい時代にイノベーションを起こし新しい付加価値を提供していくためには、従業員の意識や行動が主体的に変わり続けなければならないという強い危機感がありました」と話すのは、移転プロジェクトにPMOとして関わった人事部次長の高嶋由紀氏だ。新しいアイデアを生み出すには、組織の壁を超えたコミュニケーションが重要だが、「以前の本社ビルはワンフロアが狭く、各フロアもエレベータで分断される構造でした。偶発的な出会いも生まれにくく、組織のサイロ化の兆候も見えていました。また、社外の方とカジュアルに話をするような環境もありませんでした。自然に社内外の交流が生まれるような環境を作るため、移転することが意思決定されました」と移転の経緯を説明する。

固定席だった旧本社ビルでの働き方は、「自席と会議室の往復がメインだった」という。

「自分の所属部署以外のフロアには用事がなければ行きづらく、固定席以外の場所でのPC作業は『どう見られているか』が気になりました。また、会議室は壁で囲まれているので、中の様子がまったく分かりません。本社で働く1,300人の知見が様々なところで掛け合わされれば様々な新しいアイデアが生まれるはずですが、そもそも交流が生まれにくいため、それらの知見を十分に活かせる環境ではありませんでした」。

旧本社ビル時代には、こんなエピソードもある。社内コミュニケーションの活性化を狙って、コーヒーが無料で飲めるリフレッシュエリアを新設したが、リフレッシュエリアは若手社員の集中作業席になってしまった。固定席で仕事をしていると周りの人から話しかけられやすく、どうしても若手社員が声をかけられ様々な用事を頼まれて仕事を中断することが多くなる。そのため、集中して作業をしたい社員がリフレッシュエリアに集まり、黙々と一人で仕事をしているので、「しゃべってはいけない」という雰囲気になってしまい、とても偶発的な出会いの場にはならなかった。

働き方を抜本的に変えるには、環境を変えなければならない。加えて、旧本社ビルは築20数年が経ち、「度重なるリニューアルで様々な機能を付加してきたものの、昨今のスマートビルと比べるとやはりスペックに差がある」ことも踏まえ、テナントビルへの移転が決まったのである。

近隣で移転先を探したのは、専売公社時代から培われてきた地域社会とのつながりを大事にした結果だった。旧本社ビルから、移転先のビルが立ち上がっていく様子が見えていた。「これまで積み重ねてきた財産の上に新しいものを作り上げていく」、そう感じられるこの場所が、移転先としてベストだった。

賛成・反対に二分されたABW導入。チェンジマネジメントで理解促進図る

日本たばこ産業株式会社

2019年1月、本社移転プロジェクトのPMOが設置された。従業員の意識・行動変容が本社移転の最終目的とされたため、PMOは人事部メンバー中心に組成された。

まず、CBREをパートナーに迎え、「ワークプレイスアンケート」を実施して旧オフィスの利用状況や従業員の働き方を調査した。そこで分かったのは、若い年代ほど、仕事の中断頻度が高く、1回あたりの中断時間も長いため、「仕事の効率」に問題意識を持っていたということだ。固定席ならではの事象でもあったが、管理職は「顔が見えるマネジメント」のメリットを認識しており、「仕事の効率」における認識のギャップが発生していた。

このアンケート結果をもとに、神谷町トラストタワーの26~30階に作る新しいワークプレイスの働く環境としてのコンセプトを「Open,Flat, Flexible」に決めた。新たな価値創造に向けて、社内外での交流が生まれやすい環境にするためだ。ワンフロアの面積を旧本社ビルの5倍に拡大し、自由に働く場所を選べるABWを全フロアに導入した。26階に社内交流、30階には社外共創を目的としたコミュニケーションエリアを設けつつ、27階から29階までの執務エリアには、一人で集中したい時や、気軽に打ち合わせをしたい時など、五つのワークモードに対応したゾーンを配置した。会議室は、原則としてガラス張りにして、中の様子が分かるオープンな作りとした。

2019年7月、本社移転が公表されると同時に、新ワークプレイスで目指す働き方を従業員に理解してもらい、社内に浸透させるためのチェンジマネジメントをスタートさせた。新しい働き方のコンセプトは、「よりスマートに働き、未来志向の気づきである『インサイト』を得ながら、それらを共有して新しい価値を生み出そう」という意味を込めて「Smart, Insight, Share」に決めた。

チェンジマネジメントには、新しい働き方を従業員自ら考えてもらう狙いもあったが、その意図を理解してもらうのに苦労したようだ。部室長クラスから従業員有志に至るまで様々な階層で、新しい働き方に関するワークショップやディスカッションが行われたが、「どうすれば新しい働き方ができるのか」、その答えを求められることが多くあった。「皆で一緒に考えていきましょう」という土俵に乗ってもらうまでに時間を要した。

ABW導入に関しては、「顔の見えないマネジメント」に対して、部室長クラスから懸念の声が上がった。当初は「ABWの考え方は理解できるが、部下が目の前にいない状況でどうやって部下の成長を支援し、適切にマネジメントしていくのか」という反対意見が多かったという。こうした様々な意見にしっかりと向き合うために、部室長全員を対象にしたワークショップ(全6回)を通じてディスカッションを重ねるだけでなく、旧本社のワンフロアにABWトライアルエリアを設けることで、「体験」を通じてABWの理解を促す環境も整えた。また、反対意見がある中でも、ABW導入に好意的な部署もあり、同じフロアで隣接する複数の部室が協力して、自分たちでABWを試してみる動きも自発的に起こっていた。

コロナ禍でのテレワーク普及がABWへの移行を後押し

日本たばこ産業株式会社

ABW導入への向かい風を追い風に変えたのは、意外にもコロナ禍だった。

新ワークプレイスに移転したのは2020年10月。当初は5フロアのどこでも自由に仕事ができる想定だったが、コロナに関する情報が少ない中で、感染拡大防止を目的として、部室単位のABWに縮小し、フロア内での動線も厳しく定めたうえでのスタートとなった。これが逆に功を奏した。完全在宅勤務の期間を経て、出勤数が増えるにつれ、与えられたスペースだけでは窮屈に感じて、定められた場所以外でも仕事をしたいというニーズが高まってきた。その後、感染症対策を講じながら、次のステップとしてフロア単位のABWに拡大されたが、より一層本社ワークプレイスの様々な機能を活用したいというニーズが高まっていった。

コロナ期間が長くなるにつれてテレワークに慣れてきたこともABWへの移行を後押しした。JTではコロナ禍前よりテレワークを導入していたが、コロナの感染拡大を契機とし、それまで以上に従業員同士が顔を合わせずに働く機会が増えた。懸念を持たれていた「顔が見えないマネジメント」を行う機会が増えたものの、コロナ禍という大きな環境変化に際して、各組織で様々な工夫が行われたため大きな問題は生じず、むしろ、自身の業務内容にあわせて働き方を変えるということのメリットが体感されるきっかけとなった。

在宅でも十分に仕事を行うことができる。そうした中でも出社を選ぶのは、対面で仕事をする価値が再確認されたからこそだ。これまでの「なんとなく出社する」ではなく、働く場所・働き方の選択肢の一つとして、目的意識を持って出社する従業員が増えてきた。現在では、出社を選択した従業員が出社の目的を十分に果たすことができるようにするため、ルールを最小限にしつつ従業員の自立・自律のもとでABWを全面的に活用できるようにしている。

プロジェクトメンバーの佐々木優太氏は、「ABWの働き方が根付いたのはコロナの影響もありますが、部室長とのワークショップや各部室でのディスカッションなどを通じて、従業員一人ひとりが働き方について自分事として考える機会があったことが大きかった」と話す。

ワークプレイスの環境を社内外の共創に活用する

日本たばこ産業株式会社

本社内の交流を生み出すことに加え、本社以外のグループ会社や社外の関係者とともに創り上げていく「社外共創」も新ワークプレイスのテーマだという。社外共創の場として作られたのが、30階のコミュニケーションエリアである。ここにはエントランス、来客用会議室のほか、小規模なワークショップからプレスカンファレンスまで対応できるイベントスペース、来客も利用できる食堂やカフェがある。

コロナ禍のためイベントの数は少ないものの、すでにいくつか社外共創の実績がある。一例を挙げると、宮崎県と協業したイベントでは、宮崎県の物産を販売したほか、宮崎県産の食材を使った社食メニューを2週間提供した。コロナ禍で旅行に行けない従業員には、「プチ旅行気分を味わえる」と好評だったが、何よりも「宮崎県の目指す姿への貢献を通じてJTのプレゼンス向上を図る」という施策趣旨に対して高い賛同が得られ、また、宮崎県にとっても東京における認知度向上施策の一例となったことから、宮崎県産品や観光のPRとしても良い効果を得ることができた。

イベント期間中には館内に設置されたデジタルサイネージで人気メニューのアンケートを実施し、従業員向けアプリのトーク機能を活用することで、従業員同士のコミュニケーションも促進した。アンケート結果や、アプリでのコミュニケーションの中から抽出されたデータを協業相手に共有することで、イベントの効果測定に限らず、協業相手のビジネスにも活用してもらうことが可能だという。「どちらか一方だけが得をするのではなく、イベントを主催する双方にとってメリットが生じるようにワークプレイスの環境・仕組みを活用しています。少しずつ認知が拡大してきており、ワークプレイスを活用して共創イベントを実施したいとお声がけいただく機会が増えてきています」(佐々木氏)。

グループ会社に対しては、テストマーケティングの場としても新本社ワークプレイスを活用してもらいたい考えだ。30階のイベントスペースに隣接するカフェでは、ベーカリー事業を営むグループ会社のサンジェルマンのパンを焼き立てで楽しむことができる。また、社員食堂では同じくグループ会社のテーブルマークの冷凍食品が提供されている。本社従業員へのアンケートをもとに同社の冷凍食品を使った点心ランチを食堂で提供したところ、それをきっかけに同僚と誘い合わせて出社しともにランチで久しぶりにコミュニケーションを図る従業員もいた。高嶋氏は、「新本社をグループの資産として、本社以外の拠点の従業員やグループ会社にとっても何らかの付加価値が得られる、もしくはそれぞれのビジネスにおける新たな取り組みの実験場として積極的に活用してもらいたいです」と話す。

移転後の本社従業員の評価は好評のようだ。ワークプレイス満足度は、ポジティブ評価が移転前の38%から73%に増加、ネガティブ評価は42%から9%へと減少した。また、若手社員を中心に課題意識の強かった1日のうちでのロス時間は、移転前の47.6分/日から、移転後は24.3分/日へと半減した。

今回の本社移転により、社内外の交流を促し、新たな価値創造を生み出す場としての器は整えられた。あとは、それを従業員がどう使っていくかが重要になってくる。高嶋氏と佐々木氏は、「知見の掛け合わせによって新しい何かが生まれることを、できるだけ多くの従業員に体験してもらい、社会に対して付加価値を提供し続ける会社へと変化していきたいと思います。社外との共創もより一層加速させたく、興味をお持ちの方は是非お声がけください」と語った。

 

企業名 日本たばこ産業株式会社
施設 JT本社ワークプレイス tokinomori
所在地 東京都港区虎ノ門4-1-1 神谷町トラストタワー26~30F
稼働開始日 2020年10月
人員 約1,300人
規模 約5,800坪
CBRE業務 •本社構築に向けた物件紹介・仲介
•ABW導入・チェンジマネジメントの 調査・コンサルティング
•移転に伴うプロジェクトマネジメント

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上記内容は BZ空間誌 2022年春季号 掲載記事 です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。

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